AI・DXの動きを「連携相手への情報提供」につなげる

厚生労働省の医療情報化推進方針は、2026年10月1日から適用されています。対象期間は2030年3月31日までで、国や関係機関による基盤整備、医療等情報の連携・共有などの方向を示しています。方針本文(第1・第2)では、移行には一定の期間が必要であることも説明されています。

ここから事業所の広報に引き寄せて考えたいのは、情報を受け取る相手が、迷わず確認できる状態をつくることです。本稿で紹介する情報シートやAIへの依頼例は、編集部による業務改善の提案です。同方針が各事業所へ一律に求める帳票や、報酬算定の要件を解説するものではありません。

介護分野では、厚生労働省が2026年8月21日にデジタル中核人材養成研修の案内を掲載しています。障がい福祉分野でも、2026年3月にまとめられた資料は、チームの力を利用者への支援に結び付ける生産性向上を示しています。介護分野のお知らせと障害福祉現場の基本的な考え方を踏まえると、連絡や確認の手間を見直すことも、実務上の検討課題になります。

在宅医療の連携で役立つのは、具体的な機能と条件

東京都は、2026年10月31日更新のページで、在宅療養の連携拠点と積極的役割を担う医療機関を案内しています。地域資源の機能把握や多職種の情報共有などを挙げる一方、すべての指定医療機関が記載された取組を漏れなく実施しているわけではない、と注意を添えています。これは東京都の案内であり、全国の事業所の対応力を一律に示す資料ではありません。東京都の拠点・医療機関一覧と留意事項

地域へ届ける自社の案内にも、同じ丁寧さが必要です。「幅広く対応」「地域を支えます」という説明に、対応地域、相談を受ける条件、窓口、最終確認日を加えましょう。相手が相談前に確かめたい点を先回りして整理することが、地域連携営業の土台になります。

まずは6項目の事業所情報シートをつくる

編集部からの提案は、公開・配布してよい事業所情報を一つの原本にまとめることです。個別の利用者・患者の情報はこの原本へ入れず、管理者や実務担当者が確認した内容を記載します。

1.対象と相談条件

サービス種別、対象となる相談、個別確認が必要な条件を記載する。「相談可能」と「受入確定」を分ける。

2.対応地域と時間

市区町村、曜日、通常の受付時間を整理する。時間外の相談方法は、現場で確認できた内容を記載する。

3.対応範囲と確認事項

支援内容、医療的ケア等の相談条件、対応が難しい場合を具体化する。資格・体制・契約に照らして確認する。

4.相談窓口と連絡方法

部署、役割、連絡先、受付後の流れを示す。担当不在時に誰へ引き継ぐかも決める。

5.相談時に必要な情報

最初の連絡で確認する項目を整理する。個人情報を含む資料の受渡方法は別途、組織で定めた手順を案内する。

6.更新日と確認責任者

最終確認日、次の見直し時期、内容の承認者を管理する。配布版にも確認日と再確認先を載せる。

たとえば訪問看護なら、通常の訪問時間と緊急時の連絡体制は別項目にします。障がい福祉なら、見学相談の受付と実際の利用開始条件を分けます。空き状況など変動の大きい情報には確認日と問合せ先を添え、印刷物の記載だけで現在の受入れを約束しない運用にしましょう。

生成AIには、確認済み情報の整理と表現を任せる

原本ができたら、同じ情報から連携先別の案内文を作れます。ケアマネジャー向けには生活面の相談と連絡方法、MSW向けには退院前の相談手順、相談支援専門員向けには支援内容と利用相談の流れを読み取りやすくする、といった使い方です。

デジタル庁は2026年6月12日に政府向け生成AIガイドライン第2.0版を公表し、9月16日の解説でも活用とリスク管理を併せて説明しています。対象は政府の調達・利活用に関わる職員等で、民間の介護・福祉・医療事業所へそのまま適用される義務ではありません。参考にしながら、自社の利用範囲と確認体制を決める材料にできます。公表資料・デジタル庁の解説

そのまま使える依頼文の例

以下の確認済み・公開可能な事業所情報だけを使い、ケアマネジャー向けの案内文を300字程度で作成してください。原本にない対応実績、資格、人数、受入条件、緊急時対応は追加しないでください。不明点は「要確認」と表示し、「相談可能」を「受入可能」に変えないでください。末尾に更新日と相談窓口を記載し、作成後に原本との照合が必要な箇所を列挙してください。

使用するAIは組織で利用を認めたものを選び、この用途では公開可能な事業所情報だけを入力する運用から始めます。実在する利用者の経過、相談記録、連絡先などを広報文作成の材料へ混ぜないことを、作業手順に明記します。

完成前には現場の確認者が原本と一項目ずつ照合します。とくに「必要に応じて相談」を「いつでも対応」へ変えていないか、条件を省いていないかを確認してください。AIが生成した文章の読みやすさと、現場で実行できる内容かどうかは、それぞれ確認が必要です。

配布と更新までを一つの業務にする

案内文ができたら、ホームページ、訪問時の資料、メールなどへ展開します。媒体ごとに本文を個別管理すると変更漏れが起きやすいため、原本の変更を起点に関連資料を見直す担当者を決めます。

  1. 小さく試す:一つの拠点と一種類の案内資料を対象に、原本と確認者を決める。
  2. 連携先へ届ける:訪問やメールで「何が変わったか」「どの相談を受けられるか」を伝える。
  3. 質問を持ち帰る:説明が伝わりにくかった点を記録し、現場へ確認する。外部のAIへ個別の相談内容を入力しない。
  4. 原本を更新する:確認済みの回答を追記し、配布資料とウェブの更新を確認する。

確認の頻度は情報ごとに決めます。担当者や受付時間の変更は速やかに反映し、受入状況は相談時に再確認します。毎月の見直し日を設ける場合も、変更の連絡を翌月まで待つ運用にはしないことが大切です。

効果は「作成時間」と「相談の行き違い」で見る

最初の評価では、案内文の作成時間に加え、現場の確認・修正時間も含めて記録します。短時間で文案ができても、確認に大きな手間がかかれば、業務全体の改善につながっているか再検討できます。

あわせて、窓口への取次ぎ直し、説明不足による再連絡、古い情報の訂正がどの程度あったかを、個人を特定しない件数で振り返りましょう。問合せ数や利用開始数は人員体制、時期、地域事情などにも左右されるため、AI導入の効果だけとして判断せず、相談過程の改善と併せて見ます。

地域連携営業は、正しい情報を届け続ける仕組みへ

介護・障がい福祉・在宅医療のAI活用は、日々の案内資料から始められます。確認済みの原本を整え、AIで表現を補助し、現場が承認し、変更を連携先へ届ける。この流れをつくることが、相談のしやすさにつながると編集部は考えます。

株式会社メディケアプロモーションでは、介護・障がい福祉・訪問医療の地域連携営業を支援しています。地域への継続的な訪問活動を検討する際は営業代行サービス「Mother」、複数拠点・多エリアで地域連携営業の仕組みを整える際は「THRIVE」の案内もご覧ください。事業所の対応力を整理する作業と、それを地域へ届ける活動を併せて設計していきましょう。

編集担当:Mona|株式会社メディケアプロモーション

介護・障がい福祉・訪問医療の地域連携について、公開一次資料と営業実務の考察を分けて発信しています。