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2026.08.11訪問看護・地域連携読了約8分

訪問看護の事業継続に「利用者確保」が必要な理由

訪問看護ステーションにとって最も大切なのは、質の高い看護を提供することです。一方で、サービスを地域に残し続けるためには、利用者を安定して確保し、事業を継続できる経営基盤も欠かせません。厚生労働省の資料から、訪問看護における「利用者確保」を、売り込みではなく地域広報・地域連携という視点で考えます。

訪問看護は「良いサービス」だけでは継続できない

訪問看護ステーションは、看護師をはじめとする専門職を確保し、車両や事務所、緊急時対応、研修、安全管理などの体制を維持しながら、地域の療養生活を支えています。

その役割を継続するためには、看護の質だけでなく、事業として安定して運営できる基盤が必要です。利用者が極端に少ない状態が続けば、人材や設備を維持することも難しくなります。

訪問看護の「利用者確保」は、単に売上を増やすための活動ではなく、必要な看護サービスを地域に残すための事業継続の課題でもあります。

厚生労働省の資料でも「利用者の確保」が経営課題として扱われている

厚生労働省が公表している訪問看護ステーションの事業運営に関する資料では、「利用者の確保について」という項目が設けられています。

そこでは、訪問看護の潜在利用者は病院・診療所や自宅におり、自ら訪問看護ステーションへ問い合わせることは多くないため、医師、地域包括支援センター、ケアマネジャー、家族など、利用者と訪問看護を橋渡しする関係者との接点が重要であると整理されています。

つまり、訪問看護の場合は、必要としている本人へ直接情報を届けるだけでは十分ではありません。地域の支援者に「どんな人に、どのような支援ができるのか」を知ってもらう必要があります。

2026年の調査でも「情報提供」「経営基盤」「地域連携」が重要なテーマに

2026年に公表された「訪問看護事業所の事業継続に係る課題解決に向けて求められる関係団体の機能及び連携に関する調査研究事業」では、訪問看護事業所を支える関係団体の主な協議内容として、「訪問看護に関する実態把握及び情報提供」が81.4%で最も多く、「人材確保」が57.6%、「事業所運営基盤整備支援」が48.3%となっています。

また、支援によって得られた効果として、「地域内の事業所間連携の強化」や「病院等の医療機関との連携強化」も挙げられています。

訪問看護の事業継続は、事業所の中だけで完結する問題ではなく、地域との情報共有や関係機関との連携と一体で考える必要があることがうかがえます。

利用者確保と「売り込む営業」は同じではない

医療・介護・福祉の現場では、「営業」という言葉に抵抗を感じる方も少なくありません。

医療や看護は商品ではない。利用者を取り合うものではない。良いサービスを提供していれば自然に紹介される。そう考える方がいることも理解できます。

しかし、「売り込むこと」と「自分たちの情報を地域へ伝えること」は、本来別のものです。

精神科訪問看護精神疾患のある方への対応経験や支援体制を具体的に伝える。
看取り・終末期ターミナル期の対応範囲や緊急時の連携体制を伝える。
リハビリPT・OT・STの在籍状況や、どのようなケースに対応できるかを伝える。
医療依存度の高い方医療処置や難病など、受け入れ可能なケースを具体的に伝える。

地域の支援者が知りたいのは「何ができる事業所なのか」

ケアマネジャーや病院の退院支援担当者が、地域にあるすべての訪問看護ステーションの特徴を常に把握しておくことは現実的ではありません。

訪問看護が必要な利用者が現れた時、紹介先を考えるうえで重要になるのは、「どの事業所が、どのケースに対応できるのか」という具体的な情報です。

そのため、「訪問看護をやっています」と伝えるだけでは十分ではありません。看取り、精神科、小児、難病、リハビリ、緊急時対応など、事業所ごとの対応力を具体的に伝えることが必要です。

必要な時に「あそこなら相談できる」と思い出してもらう

訪問看護の地域活動では、訪問したその場で利用者紹介につながるとは限りません。

訪問した時には対象となる利用者がいなくても、数週間後、数か月後にケアマネジャーや病院の担当者が困ったケースに出会うことがあります。

その時に、「そういえば、あの訪問看護ステーションなら相談できるかもしれない」と思い出してもらえるかどうかが重要です。

だからこそ、一度パンフレットを配布して終わるのではなく、地域との接点を継続して持つことに意味があります。

これからの訪問看護営業は「地域広報」として考える

誰に伝えるかケアマネ、MSW、医師、地域包括支援センター、相談支援専門員など、実際に利用者との橋渡しをする相手を整理する。
何を伝えるか一般的なサービス説明ではなく、対応可能なケース、専門性、受け入れ体制を具体的にする。
継続して伝える一度の訪問で結果を求めず、必要な時に思い出してもらえる状態をつくる。
地域の声を戻す訪問先で聞いた困りごとや質問を、サービス改善や次の情報発信に生かす。

地域連携と経営は、別々のものではない

地域へ情報を届ける。ケアマネジャーや医療機関に特徴を知ってもらう。必要なケースについて相談してもらう。そして、適切な訪問看護を提供する。

その積み重ねによって利用者が安定し、人材を確保し続けることができ、訪問看護サービスを地域に残すことにつながります。

利用者確保を「営業活動」とだけ捉えると、医療や福祉の現場では違和感が生まれやすくなります。しかし、必要な人と必要なサービスをつなぐための情報提供と考えれば、その役割は地域連携そのものに近づいていきます。

まとめ|地域に残るために、地域へ伝える

訪問看護ステーションにとって、質の高い看護を提供することが最も重要であることに変わりはありません。

一方で、そのサービスを継続して地域へ提供するためには、人材確保、運営基盤、地域との連携、そして利用者との接点づくりも必要です。

売り込むのではなく、知ってもらう。利用者を取りに行くのではなく、必要な時に思い出してもらう。

訪問看護における営業活動を「地域広報・地域連携」として捉え直すことは、利用者確保だけでなく、必要な訪問看護サービスを地域に残していくためにも重要なのではないでしょうか。

編集担当:Mona
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