在宅療養支援診療所・病院にBCPが求められる
令和8年度診療報酬改定では、在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院などについて、業務継続計画(BCP)の策定が施設基準として位置付けられました。既に届出をしている医療機関には経過措置が設けられていますが、今後は「BCPがあること」自体が在宅医療体制の一部になります。
在宅医療は患者の生活の場へ出向く医療です。災害や停電、通信障害、道路寸断などが起きた際、診療所だけが動けても患者の療養生活を維持できるとは限りません。
個別BCPだけではなく「連携型」「地域BCP」へ
厚生労働省は、単一事業所で備える個別BCPだけでなく、同業者同士で患者の相互受け入れや応援を行う「連携型BCP」、さらに医療・介護・福祉・行政など地域全体で対応する「地域BCP」の考え方も示しています。
在宅医療は「代替先」がなければ継続できない
災害時に自院が訪問できない場合、誰が患者を引き継ぐのか。訪問看護が動けない場合、医療機関はどう情報を得るのか。薬の供給が止まった場合、どの薬局へ相談するのか。
こうした問いに答えるには、平時から連携先の機能を把握しておく必要があります。
- 代替診療が可能な医療機関
- 訪問看護ステーションの対応エリア
- 在宅対応薬局の機能
- 医療依存度の高い利用者を支える介護事業所
- 避難所・福祉避難所・行政窓口
ケアマネ・包括も重要な情報ハブになる
在宅患者は医療だけで生活しているわけではありません。ケアマネジャー、地域包括支援センター、訪問介護、通所サービスなど、日常生活を支える関係者がいます。
災害時に本人の状態や避難状況を最初に把握するのが医療機関とは限りません。だからこそ、平時から介護側と連絡ルートを持っておく必要があります。
地域連携営業そのものがBCPづくりになる
地域を訪問し、「どの医療機関が何に対応できるか」「どの訪問看護がどこまで行けるか」「地域で災害時に困りそうなことは何か」を把握する活動は、通常時には営業・地域連携ですが、災害時にはそのままBCPの情報になります。
名刺交換やパンフレット配布だけではなく、地域の対応力を把握しておくことが重要です。
在宅療養支援診療所が整理しておきたい情報
- 患者優先順位:災害時に優先訪問が必要な患者
- 電源依存:人工呼吸器、吸引、酸素等の電源確保
- 代替医療機関:自院が動けない場合の引継先
- 訪問看護・薬局:連絡方法と代替対応
- 情報共有:通信障害時の連絡方法
- 行政連携:地域防災・避難計画との接続
「BCPがあります」ではなく「地域でどう動くか」を伝える
地域連携の場でも、今後はBCP策定済みという情報だけでなく、災害時にどんな患者へ対応できるのか、連携医療機関や訪問看護とどう補完するのかまで共有できると、連携先からの安心感が高まります。
BCPは認証マークではありません。実際に機能するネットワークであることが重要です。
まとめ|地域を知っていることが、在宅医療を止めない力になる
在宅療養支援診療所・病院にBCPが求められる背景には、災害時にも在宅患者の療養を継続する必要があります。
自院だけでは支えきれない時、地域の誰とつながるのか。
訪問看護、薬局、ケアマネ、介護事業所、病院、行政。それぞれの役割と連絡先を平時から知っておくことが、地域BCPの土台になります。
地域連携営業は「患者を増やすための活動」だけではありません。地域の資源と関係性を把握し、非常時にも機能するネットワークをつくる活動でもあるのです。
よくある質問
BCPはひな形を作れば要件を満たせますか?
ひな形は出発点になりますが、実際の患者構成、地域特性、連携先、災害リスクに合わせて調整し、職員への周知と定期的な見直しが必要です。
訪問看護との連携もBCPに含めるべきですか?
在宅患者の継続支援では非常に重要です。連絡方法、代替訪問、医療情報の共有方法などを平時から整理しておくことが望まれます。
地域連携営業とBCPはどう関係しますか?
平時に地域の医療・介護資源と対応力を把握する活動が、非常時の代替先・連絡先を確保する基礎になります。
令和8年度診療報酬改定における在宅療養支援診療所・病院のBCP要件、厚生労働省の在宅医療BCP関連資料をもとに編集しています。
