訪問看護が目指すのは「全地域で24時間365日」
第267回介護給付費分科会では、2027年度介護報酬改定に向け、医療系サービスと中山間・人口減少地域の関係団体・自治体等から意見が示されました。日本訪問看護財団と全国訪問看護事業協会は、2040年に向けた訪問看護の使命として、全ての地域で24時間365日、必要な質の高い訪問看護サービスを提供し、尊厳ある療養生活を支えることを掲げています。
人口2万人未満では赤字事業所が51.4%
提出資料では、2024年度の決算状況について、人口2万人未満の自治体に所在する訪問看護事業所の赤字割合が51.4%と示されました。全体では34.8%、政令市群では31.0%です。これは、地域に事業所が存在することと、持続的にサービスを提供できることが同じではないことを示します。
同じ「1件訪問」でも地域によってコストが違う
事業所から最も遠い利用者宅までの平均距離は、人口2万人未満の地域で23.4km、政令市群では11.5kmでした。同じ1件の訪問でも、都市部と中山間・人口減少地域では移動時間、燃料、人員配置が異なります。訪問件数だけで生産性を比較すると地域の実態を見落とします。
人材確保にも地域差がある
訪問看護の需要は今後も高まる一方、資料では訪問看護ステーション勤務の看護師の賃金が各年代で病院勤務を下回る状況が示されています。さらに人口規模が小さい自治体ほど定期昇給額が低い傾向も示され、24時間対応を維持するための人員確保が課題になります。
夜間・早朝の「初回訪問」が評価されにくい
緊急時訪問看護加算を算定する事業所でも、初回の夜間帯等の緊急訪問では夜間等の加算を算定できない現行要件の見直しが求められました。退院直後や状態急変時ほど予定外の初回訪問が必要になる可能性があり、24時間365日の体制を誰が支えるかが問われています。
訪問看護の地域連携は「対応できます」だけでは足りない
ケアマネジャーや病院の退院支援担当者が必要とするのは、新規受入の可否、夜間・休日対応、退院直後の訪問、医療依存度の高いケースへの対応、実際の訪問エリア、緊急時の主治医連携など、紹介判断に使える具体情報です。
Motherの訪問記録で「地域の提供力」を見える化する
地域を実際に訪問すると、夜間対応できる訪問看護が少ない、退院直後の相談先に困っている、遠距離エリアは受入を制限している、人員不足で新規受入を停止している、といった公開データでは分からない情報が得られます。これらは地域の医療・介護提供力を示す一次情報になります。
全国展開ほど「地域ごとに営業を変える」必要がある
都市部では競合との差別化が課題でも、中山間地域では「そもそも誰が訪問できるか」が課題になることがあります。全国共通のブランドメッセージを持ちながら、人口構成、医療資源、移動距離、人材、競合、紹介元の困りごとに合わせて地域ごとに伝える情報を変える必要があります。
まとめ|「全国対応」は、全国で同じことをする意味ではない
訪問看護が目指す「全地域で24時間365日」の一方、人口2万人未満では赤字事業所51.4%、最遠利用者宅まで平均23.4kmという地域差があります。全国対応とは全国で同じ営業をすることではなく、それぞれの地域に合わせて地域連携を実行できることです。地域の一次情報とクライアントの受入情報を組み合わせ、必要な相手へ届ける機能の重要性は人口減少が進むほど高まります。
2027年度改定に向けて確認したい5つの地域情報
- 24時間対応:夜間・休日まで対応できる事業所はどこか
- 受入余力:現在、新規利用者を受けられるか
- 移動範囲:実際の訪問可能エリアはどこまでか
- 高医療ニーズ:看取り、医療機器、難病等へ対応できるか
- 退院支援:病院から在宅へ移る際にどこで詰まっているか
よくある質問
人口2万人未満の訪問看護事業所はすべて経営が厳しいのですか?
いいえ。提出資料に掲載された調査では、人口2万人未満の自治体に所在する事業所の51.4%が赤字でした。個別事業所の経営状況を示すものではありません。
地域連携営業では何を伝えるべきですか?
新規受入状況、実際の訪問可能エリア、夜間・休日対応、医療依存度の高いケースへの対応など、紹介判断に使える具体情報が重要です。
- 厚生労働省「第267回社会保障審議会介護給付費分科会」2026年9月16日
- 日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会「令和9年度介護報酬改定に向けた意見」
※赤字割合、移動距離等は上記提出資料に掲載された調査結果。2026年9月17日時点の公開情報をもとに編集しています。
