「約半数が赤字」は、経営者だけの問題ではない

2026年9月14日に開催された第266回社会保障審議会介護給付費分科会では、2027年度介護報酬改定に向け、施設・居住系サービスを中心とした関係団体との意見交換が行われました。

全国社会福祉法人経営者協議会は、その資料の中で、介護サービスを主体とする法人の赤字割合49.7%を示し、基本報酬の引き上げ、処遇改善、事務負担軽減などを求めています。

約半数が赤字という数字を「介護事業者の経営問題」だけで見ると、本質を見誤ります。経営が弱れば、人材採用・設備投資・新規受入・地域連携のすべてに影響します。

物価と人件費が上がっても、価格を自由に上げられない

一般企業であれば、原材料費や人件費が上がれば価格改定を検討できます。しかし介護保険サービスの価格は公定価格で決められています。

食材費、光熱費、燃料費、人件費、建物修繕費などが上昇しても、事業者が自らサービス価格を自由に変更することはできません。

今回の意見交換でも、複数団体から基本報酬の引き上げに加え、物価・賃金の変動をより機動的に反映する仕組みを求める意見が出ています。

コスト上昇人件費・物価・修繕
利益圧迫公定価格で調整しにくい
地域影響人材・受入・設備投資

赤字が続くと「新規を受けられない」に変わる

経営状態が悪化したからといって、すぐに事業所が閉鎖するとは限りません。しかし、現場ではその前にさまざまな変化が起きます。

  • 採用を抑える
  • 職員配置に余裕がなくなる
  • 新規利用者の受入を制限する
  • 対応エリアを狭める
  • 設備更新や改修を先送りする
  • 営業や地域連携へ人を割けなくなる

つまり、地域の事業所数が変わっていなくても、実際に使えるサービス量は減る可能性があります。

公開データだけでは「地域の受入余力」は見えない

介護サービス情報公表システムやWAM-NETなどを使えば、地域に何事業所あるかは確認できます。

しかし、その事業所が今、新規相談を受けられるのか。夜間対応できるのか。認知症や医療依存度の高い利用者を受けられるのか。こうした情報は公開データだけでは分かりません。

「事業所が存在する」ことと、「地域で実際に頼れる」ことは同じではありません。

地域連携営業では「需要」だけでなく「供給」を見る

営業というと、利用者や患者を増やす活動と捉えられがちです。しかし介護・在宅医療の地域連携では、供給側の状態を見ることも重要です。

利用ニーズが高くても、人員や受入余力がなければ、営業で問い合わせを増やすことが現場負担につながります。

逆に、受入余力がある事業所でも、その情報が地域へ伝わっていなければ紹介にはつながりません。

需要地域の困りごと
受入余力人員・時間・対応範囲
地域連携正しくつなぐ

Motherの訪問で確認できる「供給側の一次情報」

地域を実際に回ると、数字には出ない情報が集まります。

  • 新規受入を止めている事業所がある
  • 職員不足で対応エリアを縮小している
  • 特定の曜日や時間帯だけ受けられない
  • 認知症・看取り・医療的ケアなど受入条件が変わった
  • 施設の空室はあるが人員の関係で入居を増やせない

こうした情報は、単なる営業報告ではありません。地域のサービス供給力を示す一次情報です。

営業資料も「強み」より「今、受けられる条件」を

地域の供給力が不安定になるほど、紹介元にとって価値が高いのは抽象的な強みではなく、現在の具体的な受入情報です。

  • 現在の受入状況:新規相談が可能か
  • 対応できるケース:認知症、看取り、医療的ケアなど
  • 対応エリア:実際に継続できる地域
  • 人員体制:夜間、休日、緊急時の対応
  • 連携体制:医療機関、訪問看護、薬局等との接続

「お気軽にご相談ください」より、紹介判断に使える情報を具体的に届ける方が、地域連携としての価値は高くなります。

生成AI・介護テクノロジーも「経営基盤」の議論へ

第266回の意見交換では、日本ケアテック協会などから、生成AI、フィジカルAI、介護ロボットなどの活用や、生産性向上を報酬上評価する考え方も示されました。

AI・ICT導入の目的も、単なる新技術導入ではありません。記録、情報共有、見守りなどの負担を減らし、限られた人材を利用者支援へ振り向けられるかが重要です。

つまり、経営安定、人材確保、生産性向上、地域での受入余力はすべてつながっています。

2027年度改定までに営業・地域連携側が確認したい5項目

  • 受入余力:今、実際に新規を受けられるか
  • 人材状況:不足している職種・時間帯はどこか
  • サービス制限:対応エリアや対象ケースが変わっていないか
  • 現場負担:営業で需要を増やしても対応可能か
  • 地域不足:ケアマネ・包括が紹介先探しに困っている機能は何か

まとめ|営業の前に「地域が受けられる状態か」を見る

介護サービスを主体とする法人の赤字割合49.7%という数字は、2027年度介護報酬改定の重要な論点です。

しかし営業・地域連携の立場では、その先を見る必要があります。

経営が厳しい → 人材に余裕がない → 新規受入が難しくなる → 地域の選択肢が減る。

この流れが地域で起きていないかを把握することが重要です。

利用者を増やすことだけを営業成果とするのではなく、地域の需要と供給を見ながら、本当に受けられる事業所へ必要な情報をつなぐ。

これからの介護分野の営業支援には、「地域の受入基盤を可視化する視点」が必要になると考えます。

よくある質問

49.7%という数字は、すべての介護事業者の赤字割合ですか?

いいえ。第266回介護給付費分科会で全国社会福祉法人経営者協議会が示した、介護サービスを主体とする法人のデータです。介護業界全体の全法人を直接示す数字ではありません。

経営状況と地域連携営業はどう関係しますか?

経営悪化により人員配置や受入余力が減ると、営業で問い合わせを増やしても対応できない場合があります。営業前に現在の供給能力を確認することが重要です。

地域の受入余力はどう調べればよいですか?

公開データに加え、ケアマネジャー、地域包括支援センター、介護事業所などへの訪問を通じて、新規受入状況、対応時間、エリア、対応可能ケースなどを確認することが有効です。

参考資料・出典
  • 厚生労働省「第266回社会保障審議会介護給付費分科会」2026年9月14日
  • 全国社会福祉法人経営者協議会 提出資料
  • 日本ケアテック協会 提出資料

※2026年9月15日時点の公開情報をもとに編集しています。

株式会社メディケアプロモーション編集部

介護・障がい福祉・訪問医療の営業支援現場で得た知見をもとに、地域連携、営業、広報、AI活用に関する情報を発信しています。

編集担当:Mona